2024年3月27日水曜日

ラストラン

6時に目が覚めた。

外湯まで60秒でいける。だらしない格好で温泉に浸かる。熱い湯で昨夜の疲れが溶けていく。

最終日を迎えた。たった1泊2日の短い旅やが支払いに追われてる俺にとっては長旅。楽しすぎる。素泊まりやから朝ご飯はない。起きてすぐに温泉に行き、荷物を整理して8時には玄関に荷物をまとめて出す。

山を見るとどうやら昨夜に薄く積雪があったのがわかった。これはパウダーやぞ!

ゴンドラで山頂まで行くと、まさかのパウダー天国だった。

温泉街の餃子

昭和レトロ感丸出しのラーメン屋が今夜のディナーだ。

こんなチャンスはそうそうない。温泉街の餃子を食べれるとは。酒も入ってるしラーメンはたまらん。贅沢言えば、野沢温泉地産の郷土料理な居酒屋があればそっちやが、そんなんあるわけない。

味噌ラーメンと、肉ぎょうざ、それにメニューに「しそぎょうざ」もある。その3品を頼んだ。日本酒も。

4も5もない。

餃子と日本酒に、酔いが回った。

野沢温泉の餃子

外湯を上がり宿に帰り街に出る。ワクワクするぞ。宿を出る前にウイスキーを一気に飲み干した。アルコールにまかせ、フラフラと温泉街を歩きたい。絶対ないけど、フランスあたりの初めて日本に来ましたみたいなお尻がセクシーなジャパン野沢温泉一人旅とランデブーを薄く期待する。いくつになっても夜の街はなにかがある。

宿から温泉街までの夜道は暗く少し歩いた。

細い路地を上がってみた。すると目に飛び込んできたこの看板!

ここは一択。

餃子をたべなければ!

野沢温泉の夜

滑り終え宿に帰る。素泊まりなんでほったらかし。オールフリータイムだ。まずは徒歩1分にある外湯の「新田の湯」で温もろう。湯は異常に熱い。熱い湯は大黒湯で慣れっこだ。夜ご飯はブラブラ野沢温泉の街に出て探そう。

飲むぞ!

大好きレストハウス

今日のゲレンデは雨とガスで視界は白く曇ってやや危険だ。衝突が怖い。だから一本滑ってレストハウスでゆっくり過ごすことにした。

熱いコーヒーにした。30分くらいかけて飲んだが窓の外は相変わらずガスで真っ白。俺の女がいるレストハウスではなく、長年野沢温泉には何度も来たが初めて訪れたレストハウス。昼過ぎと今日の雨のゲレンデだからお客さんは中年のフランス人夫妻だけだった。コーヒーを飲み終えたが外はまだまだ真っ白で視界が悪い。これはまだまだかかると判断しコーヒーから日本酒に変えた。

出てきたのはまさかの北光。しかもレストハウスから酒のアテ付きとは。薄く酔いが回る。滑る気ゼロ。きついくらいイチャイチャする中年フランス人夫妻のフランス語も心地いい。

いいなぁ、野沢温泉は…

2024年3月26日火曜日

野沢の女

昭和の男は「港、港に女がおる」そんな梅宮辰夫に憧れたが令和の今、この俺がそうだ。

神戸にいる頃、冬が来ると兵庫県北部にある「奥神鍋スキー場」に俺を待つ女がいた。毎年、冬が来ると奥神鍋に滑りに行く。するとお決まりのレストハウスにMというナチュラル系の可愛い子が泰三さん!と俺を待っていた。そしてここ野沢温泉スキー場にも俺を待つ女がいる。俺も罪な男よ。

上の平山荘にはもう25年毎年通っているから女将さんも仲良しだ。可愛いんよ。今日は雨のゲレンデやからスキー場もガラガラ。レストハウスもガラガラ。「あらーまた来たの」と迎えてくれハイボールを飲む。30分くらいアルコールの酔いにまかせ、レストハウスの窓からガスで真っ白なバーンを眺めていたら「今回はいつまで」と、俺の横に椅子を持ってきて1人寂しい俺の話し相手になってくれた。

俺の隣に女が座り話し相手になっている。なんかこれ、したことある空気感やと思えば、これキャバクラやん。話の内容は「女将のシーズンオフの過ごし方」について。

男と話すより女と話す方が楽しいわ。

ヴィラ タカシオ

野沢温泉観光協会に問い合わせてみた。26の火曜一泊で安いとこはないですか。素泊まりでもいいですと。三軒ほど教えてもらい電話してみた。で、決めたのがここ。決めては電話対応した中で一番おばちゃん度数が高かったから。いい人っぽかったから。俺は洒落たアメニティより、優しい対応を大切にしたい。今回は泊まれたらそれでいい。そんな旅だ。

夜行バスは朝の7.30に野沢温泉に到着した。宿を探す。少し迷ったが宿は新田ターミナルの前にあった。まあまあデカいやん。

宿のドアを開けたら、ガチ田舎のおばちゃんが登場して「乾燥室に荷物届いてるから。なんにも出来ないけどゆっくりしていって」と、気さくだ。昨日まではいっぱいだったのと言う。ゴンドラ乗り場へのバス停は目の前だからね。

今朝の野沢温泉は少し激しく雨が降っている。ならば早速山を上がりいつものレストハウス「上の平山荘」でゆっくりしよう。

シャトルバスで長坂ゴンドラまで雨の野沢温泉村を車窓から眺める。それでも来てよかった。

今、俺はここ、野沢温泉村にいる。

それだけでいい。

野沢温泉一泊一人旅 1

2週間前に寺夫妻と3人で野沢温泉に来た。その際に「やっぱり野沢温泉はいいなぁ」と。人はいいし外湯あるし昭和の香りが残っているのもグッとくる。昨年も1人で野沢温泉に来た。だから今年も1人で来たい。そう思うと京都発野沢温泉行きのバスの空席状況を調べ宿を探す。雪質を思うと早いほうがいい。宿はわからないから去年まで民宿をされていた高坂さんに、どこかないですか?と聞いたら、知り合いは春休みなのよーとのこと。ならばと自力でようやく一軒見つかった。バスの手配も完了。

てなわけで月曜日の夜、仕事を終えダッシュで京都駅。

よーし、野沢温泉一泊一人旅。スノートリップ。神戸、京都を離れ、知り合いはゲレンデのレストハウスの女将さん1人だけ。

ゆっくりさせてもらうわと、もう1人の俺に伝える。雪面と話しながら滑る。

そんなことを思いながら眠剤飲んでバスのシートを倒した。

2024年3月23日土曜日

塩屋駅前の居酒屋「静」

太平の湯に行く。

もっと若い時、ディスコに行くとワクワクして行くと落ち着いた。それが今はスーパー銭湯だ。あの気持ちとなんら変わらん。太平の湯は一番よく行くスーパー銭湯。岩盤浴はあるし、露天風呂からは淡路島は見えるし手揉みマッサージもしている。この日は熱い湯船に浸かると一ミリも動けなくなるほど身体は疲れていた。目をつぶり口は半開き状態。サウナも4回入り岩盤浴があるリラックスルームで爆睡してもた。垂水の海から淡路島が見えるスーパー銭湯で海峡の向こうに見える淡路島を見ていると、京都暮らしは遥か彼方だ。それをするために塩屋に帰ったのだ。晩御飯は塩屋駅前の居酒屋「静」でママの作る手料理と冷酒としよう。ママに予約のメールを入れといた。

気がつけば夜は近づいてきた。

太平の湯を出て送迎バスで垂水駅まで行き塩屋へ向かう。さあ「静」で飲もう。

静に着くとカウンターに予約のプレートが置いてあった。適当にアテをいただき冷酒3号。温かいママの手料理にママが選んだ冷酒。

酔いが回る。

酒と女は2合まで…

そんな言葉がふと出てきた。

2024年3月19日火曜日

元町へ帰る その3 「鰻の青葉」

元町駅のデリカフェでゆっくりした。「裁判長、ここは懲役4年でどうですか」北尾トロ著の文庫本を読んだり2階の席から駅の往来を眺める。斜め後ろの席には菜々緒みたいな誰が見ても振り返るようなかっこいいOLがパソコンを叩いている。この菜々緒が選ぶ彼はどんな男なんだ。そんな事など思いながら午前と午後が入れ替わる頃まで時間を過ごす。ここ元町のデリカフェは神戸時代、何時間過ごしたか。暇があればこの2階でサボっていた。流行りのレトロ喫茶も大好きだが、自分の、ここにいる存在すら消してしまう喫茶も大好きだ。元町のデリカフェと河原町のスタバ。同じ立ち位置にある。

もうたっぷりデリカフェで時を過ごした。店を出て元町商店街を抜け南京町に行き益生号で焼豚を買い、昼ごはんは「青葉」と決めていた。

商店街を西に歩く。神戸を離れ4年が過ぎるが商店街のお店も入れ替わりが激しい。驚いた事に入り口にあったユニクロが閉店していた。なぜだ。商店街を3丁目の西まで歩く。4丁目手前の筋を海側に曲がると昼時過ぎやから青葉のダクトから炭焼きに当たる鰻の焼くタレが真っ白の煙とともに甘い醤油の香りがいっぱいにモクモクと元気いっぱいだ。店に入ること青葉の女将が「にいちゃん、ここ座って。今日はどっち」と。かば焼きにするわ。「肝は」つけといて。

青葉の鰻。ふっくらとして弾力が残されたかば焼きに甘いタレ。炭の香りがびっしりで山椒が甘くなる。私は山椒はかけすぎかもしれないが、それでもご飯が進む。おかわり3杯した。

商店街を大丸まで戻る途中、神戸サウナの米田くんに会い元町駅に行き垂水駅に戻り午後は太平の湯でサウナに入ろう。

京都に暮らしているのが遠くに思う。そのために元町に来たのだ。

元町へ帰る その2 「サンダーバード」

先日、寺夫妻と野沢温泉に滑りに行ってきた。3人だけの旅。その帰りは金沢からサンダーバードに乗り京都へ帰る。自由席だったので寺夫妻は2人席で私はその数席前に座り出発を待った。私の隣はまだ空席だった。このまま空席だったらいいのに、もし座るなら若い頃の酒井和歌子みたいな一人旅と京都まで時間を共にしたいと思っていたら私と同い年あたりの白人の女性が座った。

その女性は数席後ろに仲間がいて英語でやり取りをしていたからきっと数人で旅行に来ている。電車は金沢を出て京都、大阪へと向かう。京都までは90分くらいだろか。私は「最後はうまくいくイタリア人」というベストセラーの文庫本を読んでいた。ふと隣の外人さんを見るとスマホを触っている。なにかを探しているようだ。私は少し読書に疲れ本をカバンに戻すタイミングで外人さんと目があった。なにげに「どちらから?」から話が始まり、初めて日本に来ましたとか箱根に行き金沢で回転寿司を食べましたとか京都では3泊したら大阪、広島へと行きます。日本は全て美味しく清潔で人は優しいとお褒めの言葉をいただいた。ノルウェーから来ましたと言う。今の日本は円が安い。先日もベトナムから来たお客さんがやはり日本は安いと言っていた。そんな言葉を聞くと不安になるがそれでもこうやって日本に来て感動してくれる。いつも思う。日本は実は魅力ある国なのにと。

その外人さんは、京都でおすすめのお店を教えて欲しいと聞かれたから私は自分の身を隠しスマホで自分のお店を引っ張り出して「ここの餃子屋はめっちゃ美味しい。きっといい思い出になりますよ」と伝えた。

その2日後、私はお店で餃子を焼いていたらその外人女性が仲間3人さんを連れて入ってきた。ここは餃子屋さんですかと。電車の中では私は眼鏡をして私服だったが仕事中はコック姿で眼鏡はしていない。正体はバレないだろう。最後に「あの時、隣にいたのは私です」と驚かそうと。しかし、その白人女性は私と目が合うとニコニコしている。それが何度か続いた。そして再度目があった瞬間パチっとウインクされ「また会えましたね」

私は「ソーリー、自分のお店を宣伝してもた」と言い、外人さんの仲間に隣に座っていたのは私ですよ。そこでみんな爆笑して一気に盛り上がった。ホンマに来てくれたんやね。餃子はどない?日本酒もイケるでしょう。

餃子もたらふく追加してくれ冷酒も楽しんでくれた。面白いことに実はその外人女性はベジタリアンのようだが今夜は忘れるわと蒸し鶏もいただき、美味しいわと言ってくれたのが嬉しかった。

最後に写真を撮りましょうと一枚。

人生は邂逅につきる。

邂逅とは出会い。もう生涯会うことはないがそんな出会いを大切にしたい。

元町へ帰る その1

昨夜は仕事が終わると神戸に帰ると決めていた。思い返せば1カ月は帰ってなかったかも。GWが過ぎたあたりからは季節も明るくなり塩屋の海もだんだん夏のそれになり、ベランダから見える景色から元気がもらえるが寒い冬の暗い海は見たくないし、深夜の塩屋駅から暗い夜道を1人トボトボ帰るのを想像するだけで塩屋に帰る気が失せる。それでも久しぶりに神戸に帰りたくなった。少し京都を離れたい。

最終電車の新快速で京都を出たのが23.29分。駅内のコンビニで缶ビールとハイボール、それと高島屋地下でドンクのカスクード。

酔いを求めていた。

2024年3月12日火曜日

ニック その2

その2日後、仕事が終わりバイトのMちゃんとまかないの餃子を食べていたら「コンコン」とドアが鳴る。誰やろ、こんな時間に…

ドアを開けるとそこにニックが立っていた。

ニック、どないしたん?
「こないだ泰三が言っていた銭湯という風呂屋に連れて行って欲しい」と言う。ニック、まじか。よし、そうなら俺は自転車やからユーは先に梅湯に向かって歩き。俺はあとから追いかけるから。ニックは、ありがとうと何度も言って先に出た。風呂屋の前で待っていてなと伝える。高瀬川という小さな川があり橋がある。そこで座っていてくれと。

俺はチャリで梅湯に向かった。するとニックは本当に橋に腰をかけ俺を待っていた。

ニック、よし今から銭湯に行こう。バット、銭湯には少しルールがあるから俺が教えるからな。と、銭湯に入った。

まずはお湯浴びて体を一旦フレッシュにするねん。それから体を洗おう。で、風呂に浸かろう。ニックと一緒に銭湯に浸かった。ニックは「アメイジング!」と日本の銭湯に感動していた。それからサウナに行こう。ニックは俺についてくる。ニック、サウナは基本はしゃべったらアカンのやで。しゃべるならコソコソとやからな。ニックはうなずく。しばらくすると身体から汗が吹き出る。よし、ニック、次は水風呂やからな。ニックは水風呂にもちろん喜ぶ。ニック、ワンモアサウナしよ。YES。フォローミー。再度サウナに。ジーッと汗を出す。ニックがコソッと俺に質問をしてきた。泰三の膝の傷跡はなに?と。あー、これは2年前に膝の骨が壊死して骨を移植した時の傷跡よ。骨が弱ったんよ。と、言ったらニックは少し残念そうな表情になった。俺はそんなつもりではなかったからすぐさまこう言った。

ニック、一番弱いのは身体の真ん中の骨が弱くなったんよ。と言った。まだピンときてない。再度、こう言った。ニック、センターボーンよ。と言い固くなった様子を右手で表す。わかるやろ、ニック。数秒後にニックは理解するとニックは笑いをこらえ静かに爆笑する。「ニック、シー!」と俺も笑顔で。

ニックも日本に始めて来て餃子屋のおっさんと仲良くなり、今、こうやって京都の銭湯に浸かり日本人のおっさんにスーパー下品な下ネタで笑っている。俺はただ日本に来たいい思い出になってくれたら幸いやと。

さあ、ニック、上がろう。俺も家に帰りたい。
1時間ほど銭湯で過ごした。銭湯を出る。ニック、写真撮ろう。記念にな。

ニック、日本の銭湯がいい思い出になれば。

2024年3月5日火曜日

ドイツのニック その1

先日、遅めの時間に外人の若い青年3人が来て、その3人が最後のお客さんとなり後片付けしながら飲んだり喋ったりしてワイワイしてた。冷酒が飲みたいと言うからグラスに注ぐと、外人の青年はメロンの香りがするやらピーチのテイストとか言い、なかなかのベテランの感想を語り出し、俺もいろいろ学んだ。日本酒をワイン的にとらえているんやなと。聞くと彼らはドイツのどこかの2つ星のレストランで修行中だと言う。するとその青年の1人がこう切り出した。

「お願いです。仕込みを見たいです」

なるほど。彼は日本の京都で一番狭い餃子屋の仕込みが見たい。そして料理を学びたいのだと。もし、これが相手が日本人やったら絶対断るが、相手はドイツやろ。ドイツならパクりようがないし、京都に来て、やっぱりいい思い出を作って欲しい。出来るなら生涯忘れられないメモリーをドイツに持って帰って欲しい。俺が逆の立場なら、例えばイタリアのシシリー島の居酒屋の厨房で、昼過ぎからお店の仕込みを厨房で見れたら一生の思い出になる。そう思うとこう即答した。

「1PM スタート アイ メイク 餃子。ユー ジャストウォッチ アンド サムタイム ヘルプ ミー マイジョブ オールライト?」

もちろんと青年は答えた。まあ、来ても来なくてもどっちでもいい。むしろ来る確率は低いやろ。旅行者はあちこち忙しい。

ところが本当にジャスト1PMに彼は来た。サンキュー、なんでも手伝いますと。早速彼にエプロンを渡して俺はいつもの仕込みを始めつたない英語で事細かく仕込みの作業の意味を伝えて彼はメモしていた。俺が手を止め説明すると手を後ろに組み姿勢を正す。洗い物はすぐ洗う。なかなかやるやないか。

三時間はすぐ過ぎて4時になり、短い修行は終わった。彼はありがとうと感謝して、とても勉強になりましたと言う。俺は「いい思い出なればそれでいい。僕もユーからたくさん学びました。こっちがサンキューやで」と伝えた。

名前は?

ニックです。

ニックが俺に聞いてきた。仕事が終われば一緒にBARでも行きたいと。ところが俺はBARには行かないよ。仕事が終わると銭湯に行く。すまんなーと断った。

ニック「それは、なんですか」

京都にはノスタルジックな公衆浴場があり、そこにはサウナ、水風呂、電気風呂があって天国みたいな風呂がある。俺はBARより銭湯やのよと伝えた。 

ニック、記念に写真を撮ろうと俺は提案した。

外に出て、お店の看板の前で一枚撮ろう。

俺も思い出の一枚になり、おそらくニックもいい日本の思い出になったと思う。