2024年3月19日火曜日

元町へ帰る その2 「サンダーバード」

先日、寺夫妻と野沢温泉に滑りに行ってきた。3人だけの旅。その帰りは金沢からサンダーバードに乗り京都へ帰る。自由席だったので寺夫妻は2人席で私はその数席前に座り出発を待った。私の隣はまだ空席だった。このまま空席だったらいいのに、もし座るなら若い頃の酒井和歌子みたいな一人旅と京都まで時間を共にしたいと思っていたら私と同い年あたりの白人の女性が座った。

その女性は数席後ろに仲間がいて英語でやり取りをしていたからきっと数人で旅行に来ている。電車は金沢を出て京都、大阪へと向かう。京都までは90分くらいだろか。私は「最後はうまくいくイタリア人」というベストセラーの文庫本を読んでいた。ふと隣の外人さんを見るとスマホを触っている。なにかを探しているようだ。私は少し読書に疲れ本をカバンに戻すタイミングで外人さんと目があった。なにげに「どちらから?」から話が始まり、初めて日本に来ましたとか箱根に行き金沢で回転寿司を食べましたとか京都では3泊したら大阪、広島へと行きます。日本は全て美味しく清潔で人は優しいとお褒めの言葉をいただいた。ノルウェーから来ましたと言う。今の日本は円が安い。先日もベトナムから来たお客さんがやはり日本は安いと言っていた。そんな言葉を聞くと不安になるがそれでもこうやって日本に来て感動してくれる。いつも思う。日本は実は魅力ある国なのにと。

その外人さんは、京都でおすすめのお店を教えて欲しいと聞かれたから私は自分の身を隠しスマホで自分のお店を引っ張り出して「ここの餃子屋はめっちゃ美味しい。きっといい思い出になりますよ」と伝えた。

その2日後、私はお店で餃子を焼いていたらその外人女性が仲間3人さんを連れて入ってきた。ここは餃子屋さんですかと。電車の中では私は眼鏡をして私服だったが仕事中はコック姿で眼鏡はしていない。正体はバレないだろう。最後に「あの時、隣にいたのは私です」と驚かそうと。しかし、その白人女性は私と目が合うとニコニコしている。それが何度か続いた。そして再度目があった瞬間パチっとウインクされ「また会えましたね」

私は「ソーリー、自分のお店を宣伝してもた」と言い、外人さんの仲間に隣に座っていたのは私ですよ。そこでみんな爆笑して一気に盛り上がった。ホンマに来てくれたんやね。餃子はどない?日本酒もイケるでしょう。

餃子もたらふく追加してくれ冷酒も楽しんでくれた。面白いことに実はその外人女性はベジタリアンのようだが今夜は忘れるわと蒸し鶏もいただき、美味しいわと言ってくれたのが嬉しかった。

最後に写真を撮りましょうと一枚。

人生は邂逅につきる。

邂逅とは出会い。もう生涯会うことはないがそんな出会いを大切にしたい。

元町へ帰る その1

昨夜は仕事が終わると神戸に帰ると決めていた。思い返せば1カ月は帰ってなかったかも。GWが過ぎたあたりからは季節も明るくなり塩屋の海もだんだん夏のそれになり、ベランダから見える景色から元気がもらえるが寒い冬の暗い海は見たくないし、深夜の塩屋駅から暗い夜道を1人トボトボ帰るのを想像するだけで塩屋に帰る気が失せる。それでも久しぶりに神戸に帰りたくなった。少し京都を離れたい。

最終電車の新快速で京都を出たのが23.29分。駅内のコンビニで缶ビールとハイボール、それと高島屋地下でドンクのカスクード。

酔いを求めていた。

2024年3月12日火曜日

ニック その2

その2日後、仕事が終わりバイトのMちゃんとまかないの餃子を食べていたら「コンコン」とドアが鳴る。誰やろ、こんな時間に…

ドアを開けるとそこにニックが立っていた。

ニック、どないしたん?
「こないだ泰三が言っていた銭湯という風呂屋に連れて行って欲しい」と言う。ニック、まじか。よし、そうなら俺は自転車やからユーは先に梅湯に向かって歩き。俺はあとから追いかけるから。ニックは、ありがとうと何度も言って先に出た。風呂屋の前で待っていてなと伝える。高瀬川という小さな川があり橋がある。そこで座っていてくれと。

俺はチャリで梅湯に向かった。するとニックは本当に橋に腰をかけ俺を待っていた。

ニック、よし今から銭湯に行こう。バット、銭湯には少しルールがあるから俺が教えるからな。と、銭湯に入った。

まずはお湯浴びて体を一旦フレッシュにするねん。それから体を洗おう。で、風呂に浸かろう。ニックと一緒に銭湯に浸かった。ニックは「アメイジング!」と日本の銭湯に感動していた。それからサウナに行こう。ニックは俺についてくる。ニック、サウナは基本はしゃべったらアカンのやで。しゃべるならコソコソとやからな。ニックはうなずく。しばらくすると身体から汗が吹き出る。よし、ニック、次は水風呂やからな。ニックは水風呂にもちろん喜ぶ。ニック、ワンモアサウナしよ。YES。フォローミー。再度サウナに。ジーッと汗を出す。ニックがコソッと俺に質問をしてきた。泰三の膝の傷跡はなに?と。あー、これは2年前に膝の骨が壊死して骨を移植した時の傷跡よ。骨が弱ったんよ。と、言ったらニックは少し残念そうな表情になった。俺はそんなつもりではなかったからすぐさまこう言った。

ニック、一番弱いのは身体の真ん中の骨が弱くなったんよ。と言った。まだピンときてない。再度、こう言った。ニック、センターボーンよ。と言い固くなった様子を右手で表す。わかるやろ、ニック。数秒後にニックは理解するとニックは笑いをこらえ静かに爆笑する。「ニック、シー!」と俺も笑顔で。

ニックも日本に始めて来て餃子屋のおっさんと仲良くなり、今、こうやって京都の銭湯に浸かり日本人のおっさんにスーパー下品な下ネタで笑っている。俺はただ日本に来たいい思い出になってくれたら幸いやと。

さあ、ニック、上がろう。俺も家に帰りたい。
1時間ほど銭湯で過ごした。銭湯を出る。ニック、写真撮ろう。記念にな。

ニック、日本の銭湯がいい思い出になれば。

2024年3月5日火曜日

ドイツのニック その1

先日、遅めの時間に外人の若い青年3人が来て、その3人が最後のお客さんとなり後片付けしながら飲んだり喋ったりしてワイワイしてた。冷酒が飲みたいと言うからグラスに注ぐと、外人の青年はメロンの香りがするやらピーチのテイストとか言い、なかなかのベテランの感想を語り出し、俺もいろいろ学んだ。日本酒をワイン的にとらえているんやなと。聞くと彼らはドイツのどこかの2つ星のレストランで修行中だと言う。するとその青年の1人がこう切り出した。

「お願いです。仕込みを見たいです」

なるほど。彼は日本の京都で一番狭い餃子屋の仕込みが見たい。そして料理を学びたいのだと。もし、これが相手が日本人やったら絶対断るが、相手はドイツやろ。ドイツならパクりようがないし、京都に来て、やっぱりいい思い出を作って欲しい。出来るなら生涯忘れられないメモリーをドイツに持って帰って欲しい。俺が逆の立場なら、例えばイタリアのシシリー島の居酒屋の厨房で、昼過ぎからお店の仕込みを厨房で見れたら一生の思い出になる。そう思うとこう即答した。

「1PM スタート アイ メイク 餃子。ユー ジャストウォッチ アンド サムタイム ヘルプ ミー マイジョブ オールライト?」

もちろんと青年は答えた。まあ、来ても来なくてもどっちでもいい。むしろ来る確率は低いやろ。旅行者はあちこち忙しい。

ところが本当にジャスト1PMに彼は来た。サンキュー、なんでも手伝いますと。早速彼にエプロンを渡して俺はいつもの仕込みを始めつたない英語で事細かく仕込みの作業の意味を伝えて彼はメモしていた。俺が手を止め説明すると手を後ろに組み姿勢を正す。洗い物はすぐ洗う。なかなかやるやないか。

三時間はすぐ過ぎて4時になり、短い修行は終わった。彼はありがとうと感謝して、とても勉強になりましたと言う。俺は「いい思い出なればそれでいい。僕もユーからたくさん学びました。こっちがサンキューやで」と伝えた。

名前は?

ニックです。

ニックが俺に聞いてきた。仕事が終われば一緒にBARでも行きたいと。ところが俺はBARには行かないよ。仕事が終わると銭湯に行く。すまんなーと断った。

ニック「それは、なんですか」

京都にはノスタルジックな公衆浴場があり、そこにはサウナ、水風呂、電気風呂があって天国みたいな風呂がある。俺はBARより銭湯やのよと伝えた。 

ニック、記念に写真を撮ろうと俺は提案した。

外に出て、お店の看板の前で一枚撮ろう。

俺も思い出の一枚になり、おそらくニックもいい日本の思い出になったと思う。

2024年2月27日火曜日

冷酒が美味い

外人さんがお店によく来るようになり冷酒が少しずつ売れるようになった。外人さんは日本に来たらやはり日本酒にトライしたくなるのだろう。もし俺がスペインに行けばcava(スパークワイン)を飲みたい。

お店に置いてるメインの冷酒は長野の飯山市にある角口酒店の「雪明かり」

この冷酒は野沢温泉に滑りに行った時に見つけた日本酒だが、サラッとして柔らかい。だが、この一択だけじゃと家の近くにある冷酒がおそらく京都一のセレクトされた「タキモト」という酒屋で、いわゆるジャケ買いで定員さんにアドバイスは一切聞かず直感で選び購入する楽しみが増え、今ではお店に常備4種の冷酒をスタンバイするようになった。

いろいろ飲んでみると、今までは抜栓した時がフレッシュで1番美味いと思っていたが以外や抜栓して日が過ぎると味に丸味が出だしマイルドに変化する楽しみや、美味すぎてツルツル飲んでしまうファンキーな飲み方、お米からどうやってこんなにも美味い味まで持っていったのか不思議に思いながらのむ酒。

が、つい飲みすぎで翌朝、二日酔いでベットから出れず全ての自分に対する甘さの自己嫌悪の沼に落入り「もう今夜は一滴も飲まない」となる。そうして一日お酒を抜くとまた次の日の冷酒が美味い。

その冷酒は、毎夜の賄いの時、餃子と一緒に飲む。

そんなこんなで昨夜は冷酒を飲みすぎた。

二日酔いの日は、自己嫌悪でじっくり自分と向き合えるメリットもあるが…

57にもなってるが反省ばかりの人生だなと。 

それでも今は美味しい餃子と冷酒の楽しみが増えた。