垂水からJRで大阪駅に着くと駅内はたくさんの人の往来で、またそこが大阪駅やから俺もバリバリ関西人やけど、めっちゃ関西を感じた。着いたのが6時半あたり。冬が始まる師走の大阪の夜。灯りが灯り出した。海外の観光客も京都とは違いアジアが倍くらい多い。おそらく京都は昔の日本を探しに。大阪は買い物が中心やろ。地下鉄で難波まで。それからスマホをたよりに今夜寄せてもらう「岩亭」を探した。
古い雑居ビルの2階にそこはあった。シックで少しレトロな内装。カウンターが4席、2人掛けの小さなテーブルが3つ。ワンオペでされていた。俺の中で知ってる岩亭の岩田君は当時24歳の岩田君のままだったが、あれから30年が過ぎている。さすが岩田君も貫禄あるシェフになっていたが俺も同じ時間を過ごしてる。気がつけば俺も、ええおっさんになってると言うことや。自分は自分を見ることは出来ないし、見えない。
岩田君に、ゆっくり出してくださいと餃子3人前、前菜3品、春巻、ごぼうと牛肉炒め、白子の麻婆、桜エビの焼飯。海老天、どれも優しく、中華やのに油を全く同じない。岩田君と昔の三国亭の話したり餃子の話をした。岩田君は料理と同じく優しいシェフだった。浴衣美人が「最後にもう一度餃子を食べたい」しめで、餃子2人前を追加した。
それから心斎橋筋商店街の人混みにうんざりし御堂筋に出た。
御堂筋は銀杏の落ち葉で路面は黄色。師走なのかイルミネーションで街は観光客でごった返し、車のランプで輝いていた。
浴衣美人に、その銀杏の落ち葉の中に立って一枚写真を撮った瞬間、御堂筋から「泰三さん、」と叫ぶ声が聞こえた。