僕の数少ない趣味の一つにスノーボードがある。雪が降り始めると毎日のように志賀高原と野沢温泉の積雪量をチェックしインスタで投稿されるゲレンデの様子を見て、羨ましく思う。今年はいろいろあって正月に一度でもだけ行ったきりで行けていなかった。あー広大な雪山を思う存分滑りたいな。そうなると、その気持ちを抑える事は出来ない。思い切って激安弾丸野沢温泉一人旅ツアーに行くことにしたのは木曜日の夜だった。出発まで4日ある。いいぞ、いいぞ。まずは夜行バスの手配からだ。
なんのために働いているんだ。毎夜、仕事が終わって銭湯だけの日々だけでなにが楽しい。56にもなれば男一人旅も必要だと思う。あとは行くタイミングを探すだけだった。行き先は野沢温泉。あとはどこに泊まるかだ。
スケジュールとして火曜日が定休日なんで月曜日はきっちり仕事して夜の11時25分に京都駅八条口から野沢温泉行きの夜行バスに乗り7時30に野沢温泉に到着する。それからゲレンデに行き夕方まで滑り一泊。次の日の午前中は滑って2時過ぎに飯山駅までシャトルバスで行き、それから金沢。サンダーバードで京都駅に7時すぎに到着。よしよし。宿は3択。どれも一泊八千円以下の民宿。野沢温泉はそれでいい。自家製豆腐が売りの民宿に電話したらいっぱいで断られ、もう一軒は古民家の小さな民宿に電話したら断られた。ラストはいろいろあって何年も行けてなかった民宿に電話した。「アップルインたかさか」という民宿で10年ほど毎年通っていたから女将さん含め家族全員仲良しの宿だった。一度行かなくなると電話もしずらくなる。だけど、仲良くしていた優しい女将さんにどうしても会いたい。思い切って電話したら、とても懐かしく対応してくれ嬉しかった。
「いつ来られるの」「火曜日泊まるねん」
と伝えると火曜日は休みなのと言う。あーこれもタイミングが悪かったなと思うと、女将さんは古屋さん、1人なの?と聞くから、そうですよと答えたら「じゃー鍵を開けとくから朝着いたら荷物置いといて。いーよ」と迎えてくれた。
その瞬間、僕は出発の月曜日の夜まで頭の中は雪深い野沢温泉のゲレンデや「アップルインたかさか」の宿の匂いを思うとワクワクする。外湯の温泉や大好きなゲレンデにあるレトロなレストハウスで飲む珈琲。山頂から一気に滑り降りるスカイラインコース。野沢温泉に決めてよかったと自分をほめる。
宿の手配がすんで電話を切った時からもう旅は始まっていた。