「お前、そこ座っとけ」
と、相方とテーブルに座って炒飯とネギのあえ麺を注文した。
そしたら大将が、僕のテーブルのそばに立ち、僕の母の話を永遠にする。お前かオカンはえぐいオカンやってんぞ。から、そやからお前はその遺伝子あるからお前も普通やないから、大将の料理に対する考え方からありとあらゆるお話をさせてくれた。
大将は「ゆーとくけど、俺は客席の横で立って話することなんかあらへんねんぞ。絶対にな。お前やからやぞ」 「ほんなら食べ終わったら厨房入れや。炒飯の作り方、見せたるわ。こんなん絶対せーへんからな。俺らの秘密みせるなんてありえへんからな」
僕は、本当に見てえーんやろか?
僕みたいなんに、なんで見せてくれるねん?
正直、嬉しかったし、それより大将の気持ちがたまらなかった。俺なんかに…
厨房に入ると調理人たちが威勢よく気持ちいい声で挨拶してくれた。教えてくれたのは大将の息子さん。「ほな、いきますよ」
息子さんは、炒飯をゆっくりと実況中継しながら教えてくれた。
それからテーブルにもどら大将は僕の炒飯に対する質問に全て丁寧に答えてくれた。
別館牡丹園のあえ麺にはもちろんオイスターソースを使うのだがその別館牡丹園のオイスターソースを小皿に少し乗せて持ってきてくれ「ちょっと舐めてみい」と。「このオイスターソースは俺らがカキのシーズンきたら広島の契約しとる養殖の牡蠣の漁師からどっさり買ってその牡蠣の状態を把握してその年の一年分つくるねん。自家製のカキオイルつくるの別館牡丹園だけちゃうか?」
それから「お前、蒸し鶏、どないして作るねん」「こうこうこうするんです」「アホか!こないするんや!」と、別館牡丹園の蒸し鶏の作り方まで教えてくれた。
「お前、いつでもわからんよーになったらウチの厨房こいよ」
別館の大将、感謝の言葉見つからへんし、俺も口下手やから、「大将、ホンマにありがとう」しか言えなかったが、俺も52。大将の気持ち、わかるつもりでいる。その意味、受け止めて、お返しをせなアカンのもわかる。でも、この大将の気持ち、嬉しすぎる。
ありがとう、しか言えなかったが、なにをせなあかんかを、いま一度、整理して考えるよ。
「えーか、本物になるねんぞ」
この言葉が、俺の血になってきた。
ありがとう!