この日はワールドカップのジャパンの初日の曇のち雨な夜やった。雨の京都の夜。焼鳥屋のガラス窓からはアスファルトが濡れてテールランプが路面をロマンチックに光らすのが見える。その窓からは暗い山が見え、橋が見える。このお店は2回目やけど店主のにいちゃんとは仲よーさせてもらってると勝手に自認しているから注文する言葉は「みんな好き嫌いなんかあらへんから、にいちゃんの好きなよーに焼いてください」とだけ伝えて後はお酒を頼むだけにした。ただ、肝とツクネの卵は入れといてくださいと。
この夜はお店はゆっくりで貸し切りやった。そやから、にいちゃんともたくさんお話し出来て、グラスの白ワインのピッチはサラサラ進み、まるで旅先の居酒屋で時を忘れて飲んでるよーや。しかし、ホンマに美味い!京都から神戸にかえる河原町の電車は10時半やから、バッキーさんの店にも行かなあかんから9時まえにタクシーに乗り「先斗町まで」
バッキーさん…
僕の大好きな先輩。バッキーさんは僕にとって憧れであり、アニキであり、飲食業の先輩であり、洒落の塊であり、筆の師匠であり、これは絶対意味がわからんと思うが、六波羅蜜寺の仏像みたいな人。京都大丸でバッキーさんの個展をやっていたから、この日は京都に来た理由の一つ。うまいこと、伝えられへんわ。
9時に、バッキーさんの先斗町の立ち飲み屋に到着したらワールドカップのジャパンの試合が始まった。
気がつけば、立ち飲み屋はジャパンの応援で大騒ぎや。常連のオッサンが、どこで買ったかわからんが「たこ焼き食べて応援や!」と、みんなにたこ焼き配ってたわ。
なんやねん、この立ち飲み屋は。
ハッピーに、生きたい。
みんなの、願いや。
ハッピーに。
お前のハッピーはなんやねん?